「抜け毛が増えた気がする」「前髪のボリュームがなくなってきたかも」 そんな声をお客さまから聞いたとき、あなたはどう答えていますか?
もしかしたらそれ、男性型脱毛症(AGA)のはじまりかもしれません。
AGAは進行性で何も対処しなければ、少しずつ確実に進んでしまう脱毛症です。
でもご安心を。理美容師がそのサインに早く気づき、正しい知識と提案力を持っていれば、サロンワークに大きな信頼と価値を生むことができます。
今回は、わかりやすく、男性型脱毛症(AGA)の基礎と対応方法をやさしく解説していきます。
男性型脱毛症(AGA)ってどんな脱毛症?

男性型脱毛症(AGA)とは「Androgenetic Alopecia」の略で、思春期以降の男性に多く見られおでこが広がってきたり、つむじ周辺の地肌が目立つようになったりするのが典型的な症状です。
特徴は「ゆっくり進行すること」。 ある日突然ハゲるのではなく、少しずつ髪が細くなって、目立たなくなり、いつの間にか薄くなっていくのがこの脱毛症の怖さです。
原因はホルモンの誤解にあった
AGAの大きな原因は、男性ホルモンの働きによる毛根への誤作動です。
- 男性ホルモンのひとつ「テストステロン」が、
- 頭皮にある酵素「5αリダクターゼ※」と結びつき、
- より強力なホルモン「DHT(ジヒドロテストステロン)」に変化します。
このDHTが毛根の毛乳頭に働きかけ、「もう髪をつくらなくていいよ」と毛母細胞に間違った命令を出してしまいます。
結果として、髪が生えてもすぐ抜けたり、細くなったりして、少しずつ軟毛化していくのです。
※5αリダクターゼとは体内にある酵素のひとつで、男性ホルモンをより強力な形(DHT)に変換する働きがあります。特に前頭部や頭頂部に多く存在します。
なぜ前頭部やつむじから?
AGAの症状は決まって生え際やつむじから始まります。
その理由は、これらの部位に5αリダクターゼが多く存在するためで、DHTの影響を受けやすい場所だからです。
後頭部や側頭部はこの酵素が少ないため、AGAの影響を受けにくく、髪が残りやすい傾向があります。
AGAのサインを見逃さないために

以下のような変化が見られたら、AGAの兆しかもしれません。
- 生え際やつむじの地肌が透けて見えるようになった
- 髪が細くなり、ハリ・コシがなくなってきた
- 抜ける本数は変わらなくても、髪が短く・細く感じる
- 家族に薄毛の人がいる(遺伝的要素)
特に「なんとなく気になる」段階で気づけるかどうかがポイントです。
理美容師にできること

AGAの治療は医療行為なので、理美容師が直接治すことはできません。
しかし、「お客様の変化に気づく」「早く専門機関を勧める」「自宅ケアをサポートする」など、理美容師にしかできないことがあります。
例えば:
- 頭皮や毛髪の状態をしっかり観察して、変化を共有する
- 血行促進のマッサージや、スキャルプケアメニューの提案
- 頭皮に優しいシャンプーや育毛アイテムのアドバイス
- 専門医への相談を促すための声かけ
こうしたサポートが、お客様との信頼関係を深めていくのです。
まとめ:髪を育てる視点を持とう
AGAは単なる「抜け毛」ではなく、お客さまの不安や自信喪失にもつながる繊細なテーマです。
だからこそ、理美容師としての役割は大きいのです。 見た目の変化だけでなく、心に寄り添う対応ができるかどうかが、これからのプロに求められる力。
髪を切るだけでなく、「髪を育てる視点」を持った理美容師へ。
その一歩が、あなたの指名数を変え、キャリアを確実に前進させてくれるはずです。