「抜け毛が増えた」「髪が細くなってきた」「白髪が増えた気がする」こうしたお客様の声に、施術や粧剤だけで応えようとしていませんか?
その前に注目すべきは、髪の成長を支える見えない仕組み=ヘアサイクルと血流です。
今回は、毛髪の成長プロセスと、それを根底で支えている血液循環の関係を解説します。
目次
毛髪のヘアサイクルとは?髪の一生を理解する
髪の毛は、常に生え変わりを繰り返しています。
このサイクルは成長期▶退行期▶休止期という流れで進行し、1本ごとに独立して動いています。
各時期の特徴
- 成長期(約2〜6年)
毛母細胞が活発に分裂し、髪が太く長く育つ期間。
髪の約85〜90%はこの成長期にあります。 - 退行期(約2〜3週間)
毛母細胞の分裂が止まり、髪の成長がストップする準備期間。 - 休止期(約3〜4ヶ月)
毛根が退化し、髪が自然に抜ける。
この時期にある毛髪は全体の10〜15%程度。
抜け毛があっても「すべて悪い」わけではない。自然な脱毛(1日50〜100本)は成長の一環。
ただし、休止期の比率が増えると薄毛化が進行するサインです。
髪は血でできている。血流が毛髪のライフライン
髪の毛自体には血管がありません。では、どこから栄養を得ているのか?答えは毛乳頭周囲の毛細血管です。
毛根の一番深いところ(毛球)にある毛乳頭に、血液が酸素と栄養を届け、毛母細胞の分裂を支えているのです。
血流が不足すると起こること
- 毛母細胞の分裂スピードが落ち、細く短い髪が増える
- 成長期が短くなり、抜け毛が増える
- メラノサイトの働きが弱まり、白髪の原因にも
- 頭皮の冷え・こりが進み、皮脂の過剰分泌や炎症を招く
血流は、単に髪を「育てる」だけでなく、「太くする」「黒く保つ」「抜けにくくする」すべてに関係しているということ。
血流を良くするために理美容師ができること
お客様に「血流を良くしましょう」と伝えるだけでは不十分です。
大切なのは、“どう良くするか”を提案できることです。
スキャルプマッサージ(施術編)
- 側頭部〜頭頂部の揉み上げ・ほぐしで血流促進
- 耳周り・後頭部・首元のアプローチで冷え解消
- マッサージ中に「血行が良くなることで育毛効果も高まる」など、言葉で伝える価値付けを行う
ホームケア・生活習慣(アドバイス編)
- 首・肩・頭の冷え対策:お風呂・ストレッチ・蒸しタオル
- 食生活の見直し:鉄分・ビタミンB群・亜鉛・たんぱく質の摂取
- 質の良い睡眠:成長ホルモンは夜間の深い睡眠中に分泌される
- ストレスケア:交感神経優位が続くと血流が悪化する
血流の乱れが“早期サイン”として現れる場所
理美容師だからこそ気づける、血流低下の兆候は以下の通りです
観察ポイント | 見られる変化 | 可能な対応・提案 |
---|---|---|
頭皮の色 | 赤み・黄ぐすみ・白っぽさ | 血行不良のサイン → スパやマッサージ提案 |
髪の立ち上がり | ボリュームダウン・分け目が目立つ | 毛根の活力低下 → 育毛メニューや血流ケア商品 |
髪のツヤ | 光が通らない・くすんで見える | CMC補給+頭皮マッサージで巡りを促進 |
【まとめ】髪を育てるには、血を巡らせることから
「髪の栄養は、血液によって運ばれる」この当たり前の仕組みを、私たち理美容師が当たり前に語れることが、お客様の未来の髪を守る第一歩です。
育毛剤やトリートメントも大切ですが、髪が育つ土台である血流を整えなければ、その効果も長続きしません。
だからこそ、カットやカラーだけでなく、血を巡らせるプロである意識を持つことが、これからの時代の理美容師に求められています。