「カラーすると傷みますよね?」にどう答えますか?
お客様から「ブリーチってやっぱり髪に悪いんですよね?」と聞かれたとき、「はい、そうですね」とだけ答えていませんか?
美容師として、なぜ髪が傷むのか、そのメカニズムと必要な対処まで丁寧に説明できることが、信頼されるカウンセリングへの第一歩です。
今回は、ヘアカラー・ブリーチ・パーマに代表される“化学的な処理(ケミカルダメージ)”が髪に及ぼす影響とその対策について、解説します。
ヘアカラーやブリーチがキューティクルを壊す理由
ヘアカラーやブリーチで髪がダメージを受ける最大の理由は、薬剤のアルカリ成分がキューティクルを強制的に開くことにあります。
主なダメージ要因
1剤のアルカリ成分(アンモニア、モノエタノールアミンなど)がpHを上げてキューティクルを開かせます。
その後、過酸化水素(2剤)の酸化作用で、内部のSS結合(シスチン結合)が破壊され、髪の骨格が崩れます。
これにより、髪の内部にあるCMC(細胞膜複合体)やケラチンタンパク質が流出しやすくなり、ツヤ・弾力・まとまりのすべてが損なわれていきます。
特にブリーチは、メラニン色素を分解する力が非常に強いため、髪の構造全体がスカスカになるという特性があります。
パーマは髪の形だけでなく骨組みにも作用する
パーマでは、1剤で髪の内部にあるSS結合を切断し、2剤で再結合させて新しい形を固定します。
パーマの工程とダメージポイント
- 1剤(還元剤):シスチン結合を切ることで、髪の柔軟性を一時的に引き出す。
- 2剤(酸化剤):切断した結合を再び繋ぎ直す。
一見、結合を切ってまた繋ぐだけのように思えますが、実際には100%完全に再結合するわけではありません。
再結合できなかったシスチンは酸化されてシステイン酸に変化し、疎水性を失った脆い構造になります。
これがパーマ後に髪が弱く、広がりやすくなる原因のひとつです。
また、パーマ剤にもアルカリが含まれており、キューティクルへの負担はカラー同様、見逃せません。
ケミカル後の髪は「施術中より施術後」が危険
施術中だけでなく、施術後に髪の中に残った薬剤が酸化や分解を続けることで、ダメージが進行するケースも多く見られます。
施術後に起こり得る現象
- 過酸化水素の残留による遅延酸化ダメージ
- 還元剤の残留による臭いや内部酸化反応
- アルカリの残留によるpHバランスの崩壊
そのため、カラーやパーマの施術後には、残留薬剤を除去するための後処理(アフターケア)が非常に重要です。
薬剤の分解除去、pHコントロール、SS再結合促進などを目的とした専用の後処理剤や中間処理剤を活用することが、髪のコンディションを守る鍵となります。
ケミカル施術後に必要なケアの方向性
髪のどの構造がどのように壊れたかを把握した上で、補修の優先順位を決めることが重要です。
- キューティクルが傷ついている場合:外側の保護、油分・CMCの補給
- コルテックス(内部骨格)が弱っている場合:ケラチンやSS結合を再構築する補修成分
- CMCの流出が著しい場合:CMC配合トリートメントやエモリエント成分での補強
また、濡れた髪のコーミングテストで引っかかりの強さを確認することで、ダメージレベルを見極めることが可能です(リトル・サイエンティストではレベル3.5が基準)。
ハイダメージには内部補修、ミドル以下には表面と保湿重視のアプローチが有効です。
【まとめ】説明できる美容師になることが、信頼の最短ルート
ケミカル施術は、美しさを引き出す一方で、構造的に髪に大きな変化をもたらす行為でもあります。
単に「傷みますからトリートメントしましょう」と伝えるのではなく、「どこが、なぜ、どうして傷んで、どうケアするのか」を理論的に説明できるスタイリストこそ、信頼される存在です。
この知識は、お客様の不安を軽減し、メニュー提案やホームケア指導の説得力を高める大きな武器になります。
日々の施術の中で、1つひとつの工程が髪に与える影響を理解し、“髪を守れる美容師”としてステップアップしていきましょう。